4.2 被害救済と加害者対応における調停機能の限界
キャンパスハラスメントにおける相談体制の機能不全を検討する際、従来の法的規律モデルと当事者間の実質的解決を目指す修復的アプローチの間の緊張関係が大きな論点となる。大学組織におけるハラスメント処理は、厳格な証拠基準と懲戒処分を前提とする形式的司法モデルに依存しがちであるが、このような制度設計は告発に伴う心理的負担を高め、結果として潜在的な事案の表出を阻害する側面がある[3]。特に、学術環境における複雑な権力関係や、指導教員と受教者の間のみならず生じ得る多様な方向性の摩擦においては、一律の懲戒手続きでは関係性の再構築や組織的治癒が達成されにくいという限界が存在する[6]。したがって、従来の法的規制を補完しつつ、当事者の尊厳回復と組織文化の改善を志向する調停的枠組みの制度化が不可欠である。