考察:公立病院が主導する持続可能なAMR抑止モデルの課題と展望
公立病院における薬剤耐性(AMR)対策の持続可能性を確保するためには、臨床現場における多職種連携と国レベルのサーベイランス網を連動させた総合的ガバナンス体制の確立が不可欠である。院内感染対策サーベイランス(JANIS)は、各医療機関の細菌検査室データを集約・分析し、耐性菌の発生動向を可視化した上で個別病院へ迅速にフィードバックを行う有効な基盤モデルとして機能している (Tsutsui et al., 2018)。地域の中核を担う公立病院はこのベンチマーク情報を活用し、自施設における耐性菌の動向を客観的に評価することで、より実効性の高い感染制御策を迅速に最適化できる。さらに、病院薬剤師による積極的な専門的介入は、薬物血中濃度モニタリング(TDM)の実施や抗菌薬の投与期間・用量の適正化を推進し、医師による適正な薬剤選択(Choosing Wisely)を支援する中核的役割を果たす (Muraki et al., 2021)。公立医療機関がこうした多職種による抗菌薬適正使用支援(AMS)の取り組みを主導し、得られた知見やサーベイランスデータを地域医療圏全体へ波及・共有させることこそが、持続可能なAMR抑止モデルの実現に向けた決定的な鍵となる。