第1章 人口動態変動と高等教育システム再編の理論的枠組み
少子化が進展する社会における高等教育システムの再編をめぐる理論的検討において、制度的構造変化の動態と政治的言説の機能という二つの異なる分析アプローチが存在する。まず、高参加型高等教育システムの理論的枠組みでは、人口減少期における国家の政策的介入が強調される。具体的には、国家が大学間の機能的分化を誘導すると同時に、グローバル化に対応する一部のトップ大学へ公的投資を選択的に集中させることで、新自由主義的競争政策を通じた垂直的階層化を構造的に強化しているとされる(2018)。このアプローチは、人口減少下における機関の持続可能性と社会的公正性をマクロな資源配分の観点から説明する。これに対して、人口動態言説に関する批判的アプローチでは、「人口学的イマジナリー」の概念に基づき、人口減少をめぐる公的言説そのものが複雑な社会課題を過度に単純化し、困難な政策決定の責任を回避・転嫁するための政治的装置として機能していると論じられる(2022)。前者が制度構造と競争メカニズムに着目するのに対し、後者は言説の政治性と科学的根拠に基づくボトムアップな対応の必要性を提示しており、両理論の統合は大学改革の重層的理解に寄与する。